パニック障害は不安症の一種
パニック障害は、不安や恐怖が病的に高まる「不安症」の代表的な病気です。
私たちは日常生活や仕事において心配事や不安を抱くことがありますが、通常は問題が解決したり、時間が経てばそれらは解消されていきます。
一方、パニック障害における不安は理由もなくいきなり起こり、身体症状を伴う激しい発作(パニック発作)を引き起こすのです。
私の場合、パニック発作が起こると強いめまい・激しい動悸・急激な体の冷え・意識がなくなる感覚を覚え、「このまま死んでしまうのではないか」という程に強い恐怖感が沸き起こってきました。
そして、そのような経験が心に強い不安を抱かせ、また発作が起こるのを怯えるようになります(予期不安)。
こうして、今までできていたことができなくなったり、行けない場所ができたりと、日常生活が困難になってしまうのです。
また、パニック障害では、同じ不安症のカテゴリーに分類される以下の症状も併発することが多く、治療をより難しくさせることも多いのです。
文字通り、「広い場所が恐い」という意味ではないのです(笑)。
パニック障害における「広場恐怖症」の症状は、パニック発作を恐れて日常生活における様々な行動が制限されるところに現れます。例えば以下の事例のような場合です。
- 1人で車の運転ができない
- 1人で電車やバスに乗れない
- 1人で家にいられない
車の運転中は、運転中にパニック発作が起こって意識でも失ったら事故を起こして死んでしまうかもしれません。
電車やバスの中では発作が起こったら周囲から変な目で見られる、あるいは駅(停留所)に着くまで降りられない(逃げ場がない)といったような意識が働いたりします。
酷くなると、誰にも発作が起こったことに気づいてくれる人がいないので、家に1人でいることもできなくなります。私も一時期は家に1人でいることが恐怖で発作が起こったこともありました。
社交不安障害の代表的な例として、以下のようなものがあります。
私は仕事で30〜40人ほどの前でプレゼンをする機会がこれまで幾度とありましたが、最初のうちは「スピーチ恐怖症」が少しありました。
また、私の独特の感覚かもしれませんが、信号機のある交差点の横断歩道を渡っている時、赤信号で停車中の車の中にいる人からの視線に、「イヤな感じ」を覚えて心が乱されることがあります(視線恐怖症の類だと思います)。
社交不安障害とパニック障害は併発する可能性が非常に高く、米国の研究によると7割弱の人がこれらの症状を併発するという発表もあるようです。
恐怖の対象物は人それぞれですが、パニック障害の患者のうち1割弱に当たる患者が、もともと限局性恐怖症を持っていたという報告もあります。
限局性恐怖症には以下のようなものがあります。
こちらについては、読者の皆様の中にも当てはまるものがあるという方も多くいるかもしれません。
私の場合は、もともと高所恐怖症と雷恐怖症を持っていました。特に、雷の方は今でもかなり苦手です。
実は、大学時代に住んでいたアパートの隣にあった工場に、ある日雷が落ちて凄まじい雷鳴が周囲に轟きました。しかもタイミング悪く、私はその時ベランダで洗濯物を取り込んでいて、至近距離で落雷時の爆音をモロに喰らってしまいました。
とてつもなくビックリしたのを今でも鮮明に覚えています。そこからというもの、雷がかなり苦手になり、今でも雷が来たら部屋に閉じこもって過ぎ去るのを大人しく待っています(笑)。
今思えば、あの雷鳴にはかなり驚いた(一時的な強いストレスを受けた)ので、その時にパニック障害が発症してもおかしくなかったな、と感じています。
このように、他の不安障害からパニック障害が併発することもあるため、自分にはどんな恐怖症があるのか等、自分の体質などを知っておくのも大切ですね。
パニック障害の実態と発症メカニズム
パニック障害はその症状は古くからありましたが、「パニック障害」という病名が世界的に統一して使われるようになったのは1990年です。
日本では、パニック障害の治療に有効な薬(パロキセチン)が認可されたのが2000年となっています。
すなわち、日本では本格的な治療が始まってからまだ20年くらいしか経っていないのです。
そんな歴史のまだ浅いパニック障害ですが、罹患率は女性5.1% / 男性1.7%となっており、決して珍しくない病気と言えるのです。
厚生労働省の調査によると、国内のパニック障害の患者数は「約3000人(1996年)→ 約8万3000人(2017年)」と大幅に増えているそうです。
パニック障害の発病メカニズムはまだ十分に解明されてはいません。
しかし、パニック発作が起こる時には脳の機能障害が認められることがわかってきました。
私たちが強い不安などを感じると、脳内の扁桃体と呼ばれる部分から自律神経に指令が出て、ノルアドレナリンが分泌されます。
パニック障害では、セロトニンが何らかの原因で少なくなっているのです。
その結果、扁桃体からの不安や恐怖の信号が過剰に高まり、自律神経系の過剰反応(パニック発作)が起こると考えられています。
パニック障害の発症要因(ストレス・体質)
パニック障害の発症にはストレスやその人の体質などが関わってきます。
パニック障害の発症の大きな要因として「ストレス」があります。
ストレスは脳にダメージを与え、脳の扁桃体はストレスを受け続けると過敏になります。
そうなると、些細な出来事(ストレス)にも過敏に反応し、恐怖感を覚えるようになってしまいます。
パニック発作は、何の理由もなく突然起こる病気ですが、発症以前に強いストレスを受けていたというケースも多いようです。
私の場合、身体的・精神的ストレスが発症前から多少あったものの、発症の決定打になった強いストレスは、空腹による「瞬間的な低血糖」でした。
最近は仕事や家族関係がストレスになる方も多いようですが、私のような生活習慣の乱れも大きなストレスになるので、規則正しい生活を心がけるようにしましょう。
パニック障害の患者の家族歴を調べると、血縁者にパニック障害や様々な恐怖症を抱えた人がいる場合も多いようです。
ただし、パニック障害自体は遺伝性の強い病気ではありません。
一方、パニック障害になりやすい(不安を持ちやすい)体質は受け継ぐことはあるようです。
ただ、そのような体質を親から受け継いだとしても、それだけでパニック障害を発病するわけではもちろんありません。
本人を取り巻く環境や受けるストレス度合いなどによって、発症するかは変わってきます。
まとめ
パニック障害の主な構成要素は以下の通りです。
①パニック発作
不安は理由もなくいきなり起こり、身体症状を伴う激しい発作
②予期不安
パニック発作が心に強い不安を抱かせ、また発作が起こるのを怯えるようになる
③広場恐怖症
「強い不安や恐怖に襲われた場合に、逃げ場がない・誰にも助けを求められない場所にいる(行く)」ことに対して、恐怖や不安を抱く状態のこと